ツヴィンガー宮の中にある
アルテマイスター絵画館
武器博物館
陶磁器コレクション
を見学してきました。これ等,歩き方の指南書の訳どおりに日本語で書きましたが,私が納得して使えているのは陶磁器コレクションだけです。武器博物館に至っては独語名だと「装備庫」が近く,装備に武器は勿論含まれるでしょうけど,ここに展示されている物としては防具の比重が大きいので,これまた気に入りません。アルテマイスターについては,ウマく日訳出来なかったところを現地語でごまかした結果でしょう。ミュンヒェンの両ピナコテーク同様,それなら絵画館なんて言わないでガレリー(ギャラリー)にすればいいのです。
…とモンクを言い尽くしたところで中身について薄ーく喋ります。この3つ,実はどれも本当は私のストライクゾーンから外れているんです。でも,やはり王道中の王道は,その後再訪はしなくても一度は観ておくべきかなと云う美術好きのはしくれとしての奇妙な使命感に基づいて,アルテマイスターを訪れる事にしました(他の2つは1枚のチケットで入れるからオマケみたいなもんでした)。
こう云う気持ちで各地の美術館に行き,その度に「やっぱり合わなかった」と思いながら出て来るんですが,ここでも全く同じ気持ちになりました…。
ここにはとんでもない数の見学者が殺到し,入場制限まで行われていました。皆さんきっとシスティーナのマドンナ(に収められている
ふたりの天使ちゃん)目当てにやって来るのでしょう。このように,外にまで列がはみ出る始末です。今の現地の気温を考えればいくらでもカノッサの屈辱が出来る温かさではありましたが,それなりの低気温と雨の中待つのはよっぽど好きな人なのか,翌日にはドレスデンを去る等後がない観光客か。私が訪れた時は列がはみ出る前ではありましたが,それでも15分待ち。それを嫌ってお向かいの装備庫に先に入りました(装備庫後でも運良くはみ出ないうちに入れました)。中世から近代まで?の騎士の,上述どおり武器防具のコレクションで,これはこれで見事です。好みは分かれると思いますけれど…。
陶磁器コレクションについては完全に流れで。私は陶磁器に格別の興味を持っておらず,「近くて時間もあるから行ってみた」くらいのもんでした。展示物は見事ではありますが,別に心奪われる事もなく…。
尚,ツヴィンガー宮内にはもうひとつ,
数学と物理学のサロン(これまた歩き方の指南書では勝手に博物館と変換されてる)なる施設もありますが,閉まっていました。
アルベルティーヌム。この中には
ノイエマイスター絵画館と
彫刻コレクション
が入っています。これまたノイエマイスター絵画館とは神経の行き届いていない日訳ですが,ここはロマン主義から現代までの芸術作品を扱っている,18世紀中盤以降と云う私の好みに合致した美術館です。ひとつ,大好きな様式だけで固められた部屋があり,大満足しました。数多くはなかったけれど,フォン・シュトゥック,リヒターに感激。
外見はとっても重厚ですが,この美術館内の現代芸術の展示スペースはとても明るく(リノヴェーションの結果らしい),一般的な暗い色調の展示室との対照が際立っていました。
彫刻コレクションにはもっと古い物も展示されています。私の解釈に間違いがなければ,こちらはいまだに2002年の洪水の被害から完全に立ち直れていないようでした。彫刻についても私の好きな時代は絵画と変わらず,最も好きなトーヴァルセンの作品が展示されていたのは嬉しかったなぁ。
そして,そのノイエマイスター絵画館による企画展「
ドレスデンの新即物主義」が隣接する
クンストハレ・イム・リプシウスバウ(リプシウス館の文化ホール…こんな結果なら日訳しない方がいいのでこっち不採用)で催されていました。新即物主義との最初の邂逅は2001年初のハノーファー,その後は各地の現代美術館で数点見かける程度。新即物主義絵画が一堂に会すると,それなりに迫力があります。好きな時代の様式ではあるんですが,ユーゲントシュティールや象徴主義とは異なり,私の場合,どれも好き!ってワケには行きません。ここに展示されていた作品も,ガッチリ心を奪われたのは半分くらいか。
新即物主義は絵画のみならず,建築と文学の世界でも興りました。ドレスデンにはいくらかの新即物主義建築があります…あると知ってるなら観に行けよ,ってハナシですが…。
軍事史博物館。出来たばかりの新しい施設のようです。より細かい事を言えば,「連邦軍の」って冠がつきます(独語の性質上後ろに配置されてるけど)。軍事史の中でも現代物目当てで行って来ましたが,私のダメな点がここで炸裂。展示物は基本的に順番に観る私,ペース配分を考えずにしょっぱなから力を入れてしまったが為に,肝心の箇所でエネルギー切れ及び時間切れを起こしました。
バカです,本当にバカです。ただ,ドレスデンと云う立地から,私は空爆についての案内が充実しているのかなと思っていたのに,まるでそんな事はなく,どこかを贔屓する事はなく,潔いほど教科書的な展示に特化していました(時間切れこそ起こしたけれど…多分観落としてはいないと思う)。
空爆に関する案内は最上階にありますが,ドレスデンのみならず他の都市にも言及(ひとつだけ憶えているのがロッテルダム)しているから,本当に特別扱いがない。町の軍事史を知りたい人がここに行っても,なんの足しにもなりません。
そしてこの建物。…建物そのものと云うか,ボコッと出っ張った意匠。リベスキントですねー。中に入るとこれがカッコいい(時間切れを起こしたので退館時は真っ暗でした。しかしそれ故に観る事が出来た建物の夜の様子もまたステキでしょう?)。
最後に訪れたのはこの
衛生博物館。「衛星」を書き誤ったのではありません。20世紀初頭にドレスデンの企業家によって設立されたこの博物館では,人間の生活,人間の生命活動(人体の構成と機能,誕生,生殖,疾病とリアル主要標本,人体の基になる食糧,等々),にまつわる色々が一部グロく展示されています。保健体育,理科,家庭科,社会科,道徳の教材になるからか,子供の校外実習地にされているようです。2002年の初滞在では「気にはなるけど,自分が行くとこじゃないな」くらいの事を考え,開いている美術博物館の方が少ない中にあっても,調査すらしませんでした。その後私はいくつかのタブーを乗り越えられるようになり(逆に,昔は受け容れていた物事への耐性を失う事態も頻繁に発生してるけど),今シーズンは張り切って出掛けましたが,焦点を合わさず,逃げるように立ち去った展示室も一部ありました…。