Dienstag, 10. Februar 2009

或る阿蘭陀人夫婦の記録

その夫婦は成田行きのオランダ航空に乗っていた。夫40台後半,妻40台半ば(ともに勿論推定。戸籍上の夫婦なのかも不明)。

見たところ,初の渡日。出発前からフライトトラッキングを見たり,機内誌内地図(航路図)でルートを追ったりとウキウキ。夫が自分の手を飛行機に見立て,機内誌の上にかざし,手を地図上に着陸させる。「ヒウーーーーーーーーー,(着地)トキョー!!!」とかなり御満悦。
お戯れがひととおり終了すると,蘭語新聞に興ずる。丁寧に,時間を掛けて読む。記事によっては内容について2人で語り合う。

ナッツとドリンクは何事もなく終了。


初めの食事。蕎麦に躊躇い,蕎麦つゆを見て「これじゃない?ヌードルソースって書いてあるよ」(オランダ語につき,推測)と。併し先が続かず。隣の日本人に「ねぇ,これどう使うの?」と訊く。日本人が「最初にかけるんだよ」と答えると,夫は全量(この蕎麦つゆの全量はしょっぱかった。結果論だが),妻は2/3ばかりを投入。怪訝そうな顔で食す。箸は使わない。併し興味はあるのか,食器の回収の際は外し,手許においておく。

次の難問は醤油。初めは魚型の器に嬉々としていたものの,フタを開けて匂いをかぎ,指に一滴落としてそれを舐める。最初に夫,次に妻。機内食にかけようとはしない。

メニューは照り焼きの鶏(和)と不明。後方の列につき,選択の余地ナシ。夫は少なくとも鶏。ペロリと平らげる。

夫,気合の入った一眼を試運転。

軽食のカップヌードル。夫は箸食に挑戦。

朝食は洋食。ひとつも不安感をのぞかせず食べる。

夫,客室乗務員が持ち主を探していて,すぐそばに持ち主が見つかった忘れ物を「自分のだ」とふざける。

窓の外に見え始めた日本の山脈に反応。マウントフジくらいは知っているらしい。

夫,着陸のタイミングに合わせようと擬音を発する(ケツカセ連こと決定的瞬間カウントダウンセレモニー連盟を御存知?)が合わず。

成田の滑走路に着陸。駐機までの間に外を眺める夫妻。いつの間にか席を入れ替え,妻が窓に近い方に座る。ヨーロッパでは珍しい航空会社に関心がある様子。シンガポール航空機を見つけ,夫と「あれ,ニュージーランド航空じゃない?あのマーク,羊っぽいでしょう」(推)と話す。隣の日本人,「シンガポール航空だよ」と教える。

夫,ベルト着用のサインが消える前に勝手に立って荷物棚を開け,閉められなくなった日系ブラジル人(凄まじくマナーが悪く,常識がなかった。若さを免罪符には出来ない程に)の為に立ち上がって閉めてやる。


こんな事がありました。彼等の出発前の行動がオモシロかったので,「日本を知らない外国人が日本に接してどうなるか」の研究資料を作成しようと思い,記録を取っておりました。
時間がなくて,発表が帰国後1ヵ月になってしまいましたが…。

言うまでもなく,隣の日本人は私です。
私が前述の日系ブラジル人団体の荷物にヴィトラの大事なポスターを潰されかけ,荷物棚から救出して面喰っていた時も,心配し,一緒に対策を考えてくれました。
具合が良くなくてスムーズにリアクション出来なかったけれど,親身になってくれ,何かとジョークを飛ばし(但し,いかにもヨーロッパ仕様の日本人にはどうしてオモシロいか判らない型)と,陽気で親切な,とても感じのよい2人でした。
彼等は成田で乗り継いで,どこか他の所に行く風でした。だから和食に怪訝な表情を浮かべ,恐る恐る醤油を“毒見”し,日本の位置を何度も確認した(=日本自体については殆ど知識がなかった)のでしょう。
どこに行ったかは知らないし,もうオランダに戻っているでしょうけど,道中無事で,楽しく過ごせていたなら何よりです。

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